問題提起:がん患者さんの高カロリー輸液

問題提起することによって少しずつ世の中が変わる体験をしてきました。そのため、医療現場で気になったことを解決への期待をこめて問題提起していきます。

 

消化器系の症状のため経口摂取できないがん患者さんのために、点滴で栄養を行う方法があります。

 

それが、在宅中心静脈栄養法(HPN)です。濃厚な栄養剤を大血管に直接点滴できるように、胸部に埋め込んだ皮下ポートと言われるゴム栓から24時間点滴を行う仕組み。点滴は輸液ポンプを用いて行なわれます。

 

この点滴をつけたまま日常生活を送っているがん治療中の患者さんはたくさんいます。点滴棒など使わなくても、画像のようなカバンにセットして外出することができます。

 

専用ポンプの開発によって自宅でも安全に管理できるようになったことで、20年前には退院ができなかった患者さんが家で過ごせるようになりました。

 

さらに、感染・脱水・投与速度のリスクなどクリアできれば、点滴の投与時間を24時間から16時間・12時間などで投与することも可能です。

 

 

がん患者さんはカバンを抱えることなく出勤することができ、点滴を気にせず小さなお子さんやペットなどを抱っこすることができます。多くの患者さんは「何もつながってないことが本当にいい時間。」「普通に通勤できることが喜び。」と話されます。

 

問題はここからです。

医療保険では点滴ルートは週1本程度しか処方できません。

一度でも接続を外すとルートの再使用はできないため、仮に毎日12時間だけ投与する方がいたとしたら、週7本の点滴ルートが必要。

 

6本分の費用負担は誰が行うのか・・・・。

①患者さんによる自費での負担

②薬剤師による持ち出しの負担

③在宅クリニックによる持ち出しの負担

①②③のどれも選択できない限り、患者さんが点滴をせずに過ごす時間を持つことはできません。

 

私が知る限り②のケースが多いように思います。

 

この20年で自宅で安全にHPNができるようになりました。

治療中のがん患者さんが、さらにQOLを拡大できるようにするためにも・・・・点滴ルートの処方本数を増やせないものだろうか。

 

保険適応できるように働きかけるにも少ない在宅薬剤師の声では難しいとのこと。

在宅医、腫瘍内科医、消化器系の医師、患者団体、訪問看護師の応援が必要な課題です。